A41 資金ではなく経営支援だけを求めたいのですが |
内容を拝見した上で応じます。
ベンチャーキャピタル担当者にとって理想的なベンチャー投資の在り方は、最初にベンチャーに出資してから経営者と企業を理解するのではなく、投資検討先のベンチャー経営者の様々な経営相談に応じながら、長い時間をかけてじっくりと投資検討先を理解し、その上で当該出資をベンチャーキャピタル社内に提案して、投資を実行する、です。
逆にベンチャー経営者にとって外部から資金を調達する際に、よく理解した上で決断すべき、幾つかの財務判断があります。いい加減に判断を下しておくと、幾つかの事柄は将来時点で修正できません。弊社の経営支援には様々なサービスがありますが、外部からの最初の資金調達において財務面の間違いを避けるアドバイスを受けることは、ベンチャー経営者にとって重要な有益なサービスです。 |
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A42 株式上場の見通しはまったく立っていませんが、出資要請は出来ますか |
出来ます。但し出資金額はご希望に沿えない小さい金額になる可能性を予め含んで下さい。
産学連携ファンドでは新規の出資ご相談に、最初は技術シーズの良さから投資対象となるかを検討し、次に提示された事業モデルが市場で期待通りに成功するかを検討します。市場面からの検討には弊社の力だけでは不十分ですので、外部機関の知恵と力を借ります。言い換えれば、産学連携ファンドは良い技術シーズに投資するのではなく、成功する事業モデルに投資する、とご理解下さい。
株式上場はベンチャーにとって事業モデルが市場で成功した結果で生まれる選択肢の一つであり、投資側にとっては投資出口の一つの選択肢に過ぎません。投資先ベンチャーが事業に成功さえすれば、株式売却の投資出口は幾らでもあります。事業に成功すれば、ですが。 |
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A43 商品化に時間がかかり、その資金が必要ですが、出資してくれますか |
基本的には出資でなく経営支援をします。
ベンチャーキャピタルの出資は将来の何倍ものリターンを期待してのものであり、商品化の段階に出資するか、事業化成功の見通しが出てから出資するか、業種により事業成功の類型パターンが異なるので、出資に関しても業種により異なります。例えば創薬事業への出資は明らかに前者で、医薬業界の専門家が判定して、商品化の段階から出資が実行されます。工業品では商品化が完了して市場性が評価できる段階になってから、出資が可能になるでしょう。
様々な国や地方自治体の補助金が商品化の段階から用意されています。また、事業会社との提携も商品化の段階から可能でしょう。ベンチャーキャピタルからの出資を期待する前に、補助金や事業会社との提携を検討しましょう。それでも出資を求めるのであれば、遠慮なくベンチャーキャピタルに相談されては如何でしょうか。弊社でもこの段階での相談に対応します。 |
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A44 資本政策作成や株価算定が判りません |
弊社ファンドの投資対象となるベンチャーや技術シーズの企業化プロジェクトであれば、具体的な作成をお手伝いします。毎月第一、第三、第五月曜日の午後3時から1回1社で、ベンチャー経営者に資本政策作成や株価算定を手伝う会合を開催していますので、お申込み下さい。弊社はベンチャーキャピタルですので、資料を使用する前に公認会計士や税理士など専門家に作成資料を確認することが、お手伝いの前提条件です。事前申し込みの無い当日参加はお断りをしています。 |
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A45 経営者が個人保証する借入(Debt)を避けて、株式発行(Equity)だけで資金調達をしたい |
数は少ないですが、弊社ファンドの投資先にもそのような経営方針でベンチャーキャピタルより出資を受けて事業を進めている経営者がおります。今までの結果は決して成功しているとは言い難いようです。基本的には外部資金を調達して事業する上で、この考え方「事業はゲームであり、経営者として事業成功可否による資金面のリスクは負わない」は無理があるでしょう。またベンチャーキャピタルも出資段階で経営者のこの方針が判っていたら、出資をしない理由の一つに挙げるでしょう。
借入に際して企業経営者の個人保証をとることは、社会的な要請からも法制面からも避ける方向に向かっていますが、借入に際して個人保証の要請を断れる経営者は居ないでしょう。従って、事業失敗の万が一の場合には個人生活面に深刻な影響を及ぼす借入の個人保証を、極力避けたいというベンチャー経営者の気持ちは良く判ります。
ベンチャーキャピタルとしての悩みの一つに、経営者が借入に際して最初から厳しいペナルティを覚悟するのに、出資に関してはそれが無いということがあります。ベンチャーキャピタルの気持ちとしては、出資についても事業が失敗したら必ず出資金を返すという社会的なルールが欲しいところです。少なくとも出資金についても必ず返すという暗黙の社会的な了解があれば、事業が行き詰まる前にもっと経営者が必死に事業挽回の努力をするのでは、という印象を持っています。
結論として、借入と出資のバランスをとって資金調達を行う、ということでしょう。財務に「株主にとって借入は出資のリターン効率を向上させる」というMMポジション理論があり、個人保証の問題を離れても、適正規模の借入は株主の利益に結びつくので行うべき、とご理解下さい。 |
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A46 特許は発明者である経営者個人所有のままで、会社には専用実施権を与えたい。 |
一時的には許されますが、株式上場の支障になり得る事項で、最終的には特許は会社所有とする原則です。経営者が所有する特許の専用実施権を会社が持つ例が、実際には株式上場を果たした企業で増えているようです。
許されない理由は利益相反の恐れが大きいからです。事業収益の基本的な構成要素である特許があるとして、その特許の発明者が会社経営と無関係であれば、会社側の専用実施権取得で構いません。特許がベンチャー経営者の個人的に所有するものであり、経営者がロイヤリティ収入など特許使用の利点を享受し、経営者として使用ロイヤリティ料率などの対価を決定でき、結果として会社の収益を左右することは、利益相反として許されません。
弊社のファンドが事業成長の初期の段階で認めている例では、補助金制度の利用条件に「(趣旨の目的を達しない)場合は特許を補助金支給側の所有とすることがある」という条項があり、補助金の利用が終了してから、速やかに特許を会社帰属にする、という前提があります。個人所有特許を会社帰属に変更するには税制の問題が発生しますので、予めご留意下さい。 |
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A47 起業したら給与がゼロでは生活できません。適切な給与をとりたいのですが。 |
起業家が事業成功に辿り着くまでの厳しい環境について、否定する人は居ないでしょう。事業成功のために自ら用意した自己資金に加えて、外部から資金を調達する場合は、出資者に対する責任を含めて、より厳しいものになります。将来に予測される、もしくは予測できない資金需要に備えて、手元資金の費消計画と将来の資金調達計画を検討していくと、経営者としての自分の給与を決めることは本当に難しい判断となります。
生活のための資金は当然に必要ですが、事業資金から幾ら回すかは、すべからく経営者ご自身の判断(哲学?)になります。事業資金からは給与を一切とらない判断をされている起業家が、産学連携ファンドの出資先に複数あります。起業した事業の他に大学からの給与が出ていたり、早期退職で長期間の生活資金を確保できているケースなど、いずれも起業時に生活資金を予定出来た方々です。
しかし大部分の出資先は出資者から集めた事業資金から給与をとっています。給与の額について相談される場合、産学連携ファンドでは「成功したら得られる報酬は、成功してからとりなさい」と、「成功するまではミニマムの給与にしなさい」と、申し上げています。起業する前に得ていた給与より多くとることは、経営者としての責任が増えたから良いと主張されても、自己資金で事業を継続されているのであれば結構ですか、他人の資金を使っている以上は「もう一度検討して下さい」と申し上げます。
起業家にとって適切な給与とは、家族を含めて生活が維持できる最低水準以上であること、将来の見えない資金需要を計画する過程で決めること、成功報酬分は成功してからもらう、ことでしょう。 |
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A48 役員派遣などベンチャーキャピタルの経営関与は害が大きいと思います |
理由は何でしょうか。ベンチャーキャピタルが経営に関与するだけの力もメリット期待も無い、のであればその通りです。
繰り返しになりますが、優れた技術シーズが事業成功に結実するためには、商品化の成功を始め、有効な市場アクセス、競合対策、組織構築など、多くの事業要素の獲得が必須です。役員派遣などのベンチャーキャピタルの経営関与は、ベンチャーが欠いている事業要素を補完する、経営努力を支援するものです。投資契約にて要求される条項なので、事前に十分にベンチャーキャピタルと議論を行い、害が無いように相互理解を築くことが出来ます。 |
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A49 経営権を確保するために、持ち株比率は50%以上を上場まで保持したい |
経営者が持ち株比率50%以上を持つことは、経営上で他人に左右されない強い決定権を持つことを保証します。他の株主が34%の重要事項の拒否権を持ったとしても、経営者にはいくらでも対処の仕方があります。漠然とそのような希望を持つことは当然でしょう。
外部資金を出資により調達するベンチャーは、業種により必要資金額が変化するので一概には言えませんが、大きな資金を必要としないITベンチャーであれば十分に可能でしょうし、必要資金額が大きい開発製造型のベンチャーは方針を貫くのが難しいでしょう。
持ち株比率が50%を割ったら、即ち絶対的な経営権でなくなったら、何が経営者にとって問題になるのでしょうか。経営者が事実面で事業推進者であるか、雇われ経営者であるかで問題が異なります。
ベンチャー経営者の場合はほとんどが事業推進者でしょうから、外部から評価するベンチャーの会社価値として、その経営者を欠いたら事業がうまく進まず、価値が大幅に落ちるでしょう。従って、経営者は持ち株比率によらず、既に強い経営上の地位を占めているのであり、持ち株比率が50%を割ることによって経営支配権が揺らぐことは、少ないでしょう。しかも事業成功に必要な資金調達により徐々に持ち株比率が下がっていくのであれば、増資の都度に経営権が出資者から認められており、問題とはならないでしょう。株主にしてみれば、辞められたら、経営を放棄されたら、困るのです。最後まで責任を持って事業成功に辿り着いて欲しいのです。
雇われ経営者は本来的に、持ち株比率の問題を克服した株主間のバランスの上で任にあるので、このような要求は出てこないでしょう。
従って事業を推進する経営者にとって、持ち株比率を50%以上に保つことは、経営権の維持(裏返せば経営責任を持つ)に絶対に必要であるとは言えません。 |
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A50 投資契約で経営者が株式買戻し義務を負うことに、異論があります |
ベンチャーキャピタルから出資を仰ぐと、必ず投資契約を締結して、ベンチャーキャピタルからは出資の目的達成のための様々な条件が、ベンチャー側からは資金調達の条件が、何らかの内容で定められます。ベンチャーキャピタルとしてはあらゆるケースに予め契約上で対処しておきたい訳で、何らかの理由で投資の継続が難しくなったら、損をしない価格で、経営者に出資分を引き取ってもらいたい訳です。そのためにベンチャーキャピタルは株式買戻し条項を盛り込むことを要求します。会社側にも買戻し義務を契約上で負わせる内容が通常ですが、法人間の予めの買戻し義務を伴う出資は法的に疑問があり、経営者個人に予め買戻し義務を課そうとする訳です。
ベンチャー経営者は本条項を拒否することが出来ますが、そのために出資を受けられなくこともあり得ます。経営者個人が買取りを迫られるケースに陥った場合は、例外を除いて経営者個人には負担能力が限られているでしょうし、会社にも買取り資金が欠けているでしょう。契約上で買取価格を定めていても、実際には簿価純資産方式の非常に低い価格に落ち着くことが圧倒的に多いようです。ベンチャーキャピタルは最終的に投資した株式をファンド期間内に全て処分する義務があり、例え契約外の低い株価でも、引き取ってもらうことで満足せざるを得ないからです。
従って、経営者が株式買戻し条項に納得できなくても、実害はほとんど無いと天秤にかけて、出資を実行してもらうことの方が得策ではないでしょうか。 |
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A51 将来の事業成功を見込んで、なるべく高い時価総額で増資をしたいのですが |
事業が計画通りに順調に成長しない限り、高い時価総額(株価X株式数)での増資は次の増資の大きな障害になります。企業成長が計画通りに推移するという前提を置いて、無理な増資を実行するのは危険です。なるべく株価を高く、という経営者の気持ちは理解できますが、自分の首を絞めることにならないように、ほどほどの時価総額の設定で満足しましょう。
一般的に出資から投資出口まで最速でも5年以上かかるので、ベンチャーキャピタルは縦軸に売上高、横軸に時価総額を置いた対数表示の2次元のグラフに、個別の投資先の推移を毎年プロットして、右上がりに推移しているか、見ています。横軸の時価総額が増える(横軸で右に移動)ことは増資を実行したことを意味し、それに伴い若しくは先だって売上高が増大している(縦軸で上に移動)かを見て、事業計画通りに事業が成長しているか(右上がり)を評価する訳です。
即ち、右上がりであれば正常で、右下がりは異常信号となります。右下がりは増資はするものの売上がさっぱり伸びないことを意味し、事業計画から大きく逸脱していることを示します。ベンチャーキャピタルは右肩下がりの投資先の株式については、売却処分をするなどの努力を始めます。最初は経営者に対する買戻し要求となるでしょう。
異常に高い時価総額での増資はどのようなプロットになるのでしょう。そのような増資を行った投資先は、ひと固まりの一般的な増資を行っている投資先グループから、ポツンと離れてプロットされます。ひと固まりから右に離れたプロットとなります。先ずはそのような増資要請にはベンチャーキャピタルは応じないでしょう。無理な事業計画であることが見え見えですから。
経営者として毎年の事業成長推移を上記のような二次元対数グラフで管理していくことを勧めます。 |
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