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Q&A

質問 質問を歓迎します。どんどんお寄せ下さい。記載は弊社と投資先、候補との対話で記録された質問です。

矢印 全般
Q11 技術系のベンチャー投資が専門と聞いていましたが、株式市場活性化ファンドは分野が違うのではありませんか ⇒A11
Q12 昨今の大不況によりベンチャーキャピタル投資が成り立たなくなりませんか ⇒A12
Q13 技術ベンチャーより例えば餃子チェーンの方が投資に成功しませんか ⇒A13 
Q14 ファンドの長期間投資業務には年齢の若いキャピタリストでなければならないのでは ⇒A14 

矢印

株式市場活性化ファンド
Q21 何故にこのような組立てのファンドが出来るのですか ⇒A21
Q22 直前2期に入っている企業に投資したら、短期間の投資故に株式上場差益が小さいでしょう ⇒A22 
Q23 安定的に10〜20%のIRRが得られる投資機会を探しています ⇒A23 
Q24 他のベンチャーキャピタルで同じようなファンドが組成できませんか ⇒A24 

矢印

産学連携ファンド
Q31 アーリー企業の投資は難しくありませんか ⇒A31
Q32 設立から上場までの株式上場企業の平均値は15〜18年で、10年間のファンド期間は短い? ⇒A32
Q33 産学連携ベンチャーへの投資は失敗する、のが定説になったのでは ⇒A33
Q34 国公立研究所の技術シーズにアクセスしたいのですが ⇒A34

矢印

出資要請
Q41 資金ではなく経営支援だけを求めたいのですが ⇒A41
Q42 株式上場の見通しはまったく立っていませんが、出資要請は出来ますか ⇒A42
Q43 商品化に時間がかかり、その資金が必要ですが、出資してくれますか ⇒A43 
Q44 資本政策作成や株価算定が判りません ⇒A44 
Q45 経営者が個人保証する借入(Debt)を避けて、株式発行(Equity)だけで資金調達をしたい ⇒A45 
Q46 特許は発明者である経営者個人所有のままで、会社には専用実施権を与えたい。 ⇒A46 
Q47 起業したら給与がゼロでは生活できないので、適切な給与をとりたい。 ⇒A47 
Q48 役員派遣などベンチャーキャピタルの経営関与は害が大きいと思います ⇒A48 
Q49 経営権を確保するために、持ち株比率は50%以上を上場まで保持したい ⇒A49 
Q50 投資契約で経営者が株式買い戻し義務を負うことに、異論があります ⇒A50 
Q51 将来の事業成功を見込んで、なるべく高い時価総額で増資をしたいのですが ⇒A51 


回答  弊社の考え方です。必ずしも出資に際しての前提条件となるものではありません。

全般
A11 技術系のベンチャー投資が専門と聞いていましたが、株式市場活性化など分野が違うのでは
弊社の強みは必ずしも技術系ベンチャービジネスへの投資分野だけに限られたものではないと考えております。他に、弊社経営陣が個人的に持つ、優良なオーナー企業数百社とのネットワークという強みがあり、株式市場活性化ファンドの組立てに繋がりました。株式市場活性化ファンドに限らず、英国チェルシーフラワーショーで金賞を得た石原和幸さんの事業応援など、いろいろな投資機会で弊社の持つ多面的な強みを発揮していきたい、と願っております。
A12 昨今の大不況によりベンチャーキャピタル投資が成り立たなくなりませんか
ベンチャーキャピタル業界としては今回の不況から受ける影響は、本質的なものであると言えるかもしれません。弊社は大手のベンチャーキャピタルと異なり、専門分野で投資を行うブティック型のベンチャーキャピタルで、今回の大不況により幾つかの面で逆に投資機会が発生した、と認識しております。一例として本年6月に、放出されたベンチャー株式に投資する、フェニックスファンドを組成する準備を始めました。ブームであった2000年ごろに組成されたファンドの期限が来たり、不況の影響でベンチャーキャピタルの投資基準がより厳しくなって、優良なレイター段階のベンチャーの株式が比較的有利な価格で放出される機会が、多く生まれています。弊社にとっては不況もまたチャンスです。
A13 技術ベンチャーより例えば餃子チェーンの方が投資に成功しませんか
否定しません。しかし弊社もベンチャー企業で、経営資源が限られています。大手ベンチャーキャピタルに伍して事業成長を目指すには、他社と同じことをしていてはいけないと自覚しています。弊社の投資担当者はいずれも技術系の事業会社出身であり、実際に複数の技術ベンチャーの経営に血を流すような苦労を重ねた経験を持ちます。マンパワーを活かした大手ベンチャーキャピタルの営業力・ベンチャー発掘力に対抗して、有望なベンチャーを発掘しリードとして投資と経営を引っ張り投資に成功していくには、自分達の得意な投資領域で勝負したいと願っております。
A14 ファンドの長期間投資業務には年齢の若いキャピタリストでなければならないのでは
弊社産学連携ファンドの契約期間は10年間で、さらに2年の延長があり得ると、組合規約に規定されています。仮に担当者が60歳であるとファンド期間中に70歳になり、LP組合員候補としてはそのようなファンドには出資検討を躊躇うかもしれません。逆に、キーマンとして組合規約に規定する対象に優秀な若い担当者を提案したら、投資経験が乏しいと拒否された例があります。
投資業務は一人で進める訳ではありませんので、問題は投資チームとして、活力ある投資成功まで粘れるメンバー年齢構成かどうか、ということでしょう。投資チームのリーダーはキーマン登録されたメンバーですが、ベンチャー経営の経験を有し、言わば命がけでベンチャー経営を進めている経営者と、まともに渡り合える人格の持ち主でなければなりません。従ってキーマンには年齢要件より投資成功能力要件の方が重要で、60歳のキーマンでも構わないと考えております。
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株式市場活性化ファンド
A21 何故にこのような組立てのファンドが出来るのですか
弊社のベンチャーキャピタルとしての持ち味は、投資後にベンチャーが市場で商品やサービスをより早くより確実に売り上げる「支援力」を持つことです。2002年に弊社の旗艦ファンドである産学連携ファンドに国の機関からファンド出資額の50%の10億円をご出資いただいたのは、この点が高く評価されたからと聞き及んでおります。
弊社会長の武士は25年にも及ぶ証券会社在職時に数多くの株式上場を支援し、企業オーナーと深い密接な関係を築いて参りました。その企業オーナー達が弊社ファンドの投資先に市場・販売面で全面支援をしていただけ、上記の支援力となります。
オーナー企業の中には古い歴史を誇り、むしろ株式上場を選択しなかった企業が多くあります。そのような企業が世代交代を迎え新しいオーナーになっていく際に、新しい考え方として株式上場を選択する例が増えて来ました。このような機会には真っ先に弊社会長武士に株式上場について相談が参ります。これらの企業が株式上場に進む場合には、株式上場に支障となる株主構成の是正など、ファンド投資の機会が発生します。株式市場活性化ファンドはこのような背景で生まれました。
A22 直前2期に入っている企業に投資したら、短期間の投資故に株式上場差益が小さいでしょう
まさしくご質問は株式市場活性化ファンドの成功可否の核心を突いています。株式上場直前2期に入った企業に投資することは、投資として株式上場が確定した案件に投資するリスクの低いものですが、逆に株式上場後に投資株式を売却して得られる益は、当然ながら長期間の投資と比較して小さいものになります。また株式上場に際しての売却株価も投資時点では不明な投資の基本要素で、投資できる機会でもリターンの観点から投資をしない選択が必要となります。株式市場活性化ファンドはこのような様々な要因を配慮して、より確実な投資であるが、より小さい益を確保しながらファンドの求めるリターン水準を得られるように、組み立てられています。
A23 安定的に10〜20%のIRRが得られる投資機会を探しています
それには株式市場活性化ファンドがぴったりです。株式上場直前2期に入った企業の株式に投資するので、投資そのものが失敗するリスクは比較的に少なく、2〜3年の短期間の投資で個別の株式売却益は小さいと予想されますが、こまめに株式購入と株式売却の投資サイクルを重ねていくことが出来ます。安定したIRRを求める基金や機関投資家のニーズにファンド設計を合わせました。
勿論、弊社の安定的な投資であるという説明は、保証された投資を意味するものではありません。投資が目標IRRから悪い方に外れるリスクは存在します。
A24 他のベンチャーキャピタルで同じようなファンドが組成できませんか
十分に考えられます。より確実性のある株式上場の投資機会をベンチャーキャピタルは必死で探している筈ですから。
他社のことは分かりませんが、弊社会長武士のオーナー企業経営者とのネットワークは、証券会社勤務時代の25年に及ぶ長い付き合いの中から生まれたもので、サラリーマンであるファンド担当者の努力で達成できる投資候補経営者との付き合いとは、深さにおいて親密さにおいて次元が異なると言えるでしょう。オーナー経営者が社内で株式上場を議論・決定する前に、外部の人間が密かに心の内を相談する相手となるのですから。
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産学連携ファンド
A31 アーリー企業の投資は難しくありませんか
事業成長の段階がアーリーであるベンチャーほど投資のリスクは高く、投資リターンが大きいと言え、ハイリスクハイリターンの投資になります。リスクが高いことは投資が難しいということです。
産学連携ファンドは案件発掘・選択の過程を含め、投資の進め方に出資者から高く評価された弊社独自の投資プロセスを採用し、所謂インキュベーション支援を徹底することによりリスクの高い投資のリスクを低くすることに成功してきました。言わばローリスクハイリターンの投資を可能にしました。
A32 設立から上場までの株式上場企業の平均値は15〜18年で、10年間のファンド期間は短い?
株式上場までの期間のばらつきは個別の投資案件の要因の方が大きいという印象ですが、統計的にはその通りです。従って、投資出口として株式上場よりもM&Aされることを含む株式売却の割合が圧倒的に多いという前提で、産学連携ファンドではアーリー段階のベンチャー投資に取り組みます。
その目的を達成するために、投資に際しては弊社が株主ベンチャーキャピタル間でリード役となるように努め、投資条件に弊社より役員を1名以上出すことを盛り込みます。経営支援に際しては、企業価値を高めて、市場で既に成功している事業会社が買収の対象にしたがるような魅力を持つように、努めます。
A33 産学連携ベンチャーへの投資は失敗する、のが定説になったのでは
2000年に入り国策として産学連携が叫ばれ、国の資金を活用して大学発のベンチャーが育つような環境整備がなされました。しかしながら最近の検証では必ずしも産学連携ベンチャーが数多く成功したとは言えない結果が出ています。原因の一つに挙げられるのは、良い技術だから商品やサービスが市場で必ず売れるとは限らず、事業成功に技術の良さが結実するには、商品化成功、事業組織構築、経営人材獲得、アライアンス構築、時宜を得るなど、様々な他の事業要素が備わっていることが必須である、ことです。産学連携ファンドでは投資プロセスにおいて徹底したインキュベーション支援を実施し、良い技術であるは当然の前提として、その他の事業成功要素の補完に努めます。
新しい技術はやはり多くの研究開発資金が投入される場から生まれるものでしょう。その意味合いにおいて、国内では大学や国公立研究所の産学連携の場は依然として技術シーズを生み出す場でしょう。国内では事業会社が外に出す自社技術シーズの開放やカーブアウト案件は昔より増えましたが、依然として主流にはなっていません。投資対象が生まれる機会がより多い場としては、依然として産学連携ベンチャーが主でしょう。
投資の回収出口は必ずしも株式上場とは限りません。むしろ優れた技術を事業化するベンチャーは、新しい事業シーズを探す事業会社にとって魅力的な事業提携や買収の対象です。弊社は産学連携ファンドにおいて投資の成功を追求することと並行して、事業会社のLP(ファンド組合員)に新事業のシーズを見つける場として提供してきました。
A34 国公立研究所の技術シーズにアクセスしたいのですが
産学連携ファンドの対象は大学だけでなく、国公立研究所の技術シーズの事業化も含みます。弊社の経験では、大学より国公立研究所の技術シーズの方がより深く、より実世界の問題に対応する、と言えるでしょう。
自社の新事業のシーズ探しに国公立研究所のシーズを検討するのですか。自ら直接に国公立研究所にアクセスするのも一法です。しかし産学連携ファンドに出資して、ファンドが投資対象として技術を評価する際に行う、市場面から事業化の可否の検討成果を入手する、ことがより効率的と言えるでしょう。
国公立研究所の側もベンチャーキャピタルに事業化支援を期待して、研究所自身が自覚する、より完成度の高い、より市場の要求が認められる、技術シーズを持ちこむ傾向にあります。事業会社が単独アクセスするよりファンドを経由する方が有利な点でしょう。
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出資要請
A41 資金ではなく経営支援だけを求めたいのですが
内容を拝見した上で応じます。
ベンチャーキャピタル担当者にとって理想的なベンチャー投資の在り方は、最初にベンチャーに出資してから経営者と企業を理解するのではなく、投資検討先のベンチャー経営者の様々な経営相談に応じながら、長い時間をかけてじっくりと投資検討先を理解し、その上で当該出資をベンチャーキャピタル社内に提案して、投資を実行する、です。
逆にベンチャー経営者にとって外部から資金を調達する際に、よく理解した上で決断すべき、幾つかの財務判断があります。いい加減に判断を下しておくと、幾つかの事柄は将来時点で修正できません。弊社の経営支援には様々なサービスがありますが、外部からの最初の資金調達において財務面の間違いを避けるアドバイスを受けることは、ベンチャー経営者にとって重要な有益なサービスです。
A42 株式上場の見通しはまったく立っていませんが、出資要請は出来ますか
出来ます。但し出資金額はご希望に沿えない小さい金額になる可能性を予め含んで下さい。
産学連携ファンドでは新規の出資ご相談に、最初は技術シーズの良さから投資対象となるかを検討し、次に提示された事業モデルが市場で期待通りに成功するかを検討します。市場面からの検討には弊社の力だけでは不十分ですので、外部機関の知恵と力を借ります。言い換えれば、産学連携ファンドは良い技術シーズに投資するのではなく、成功する事業モデルに投資する、とご理解下さい。
株式上場はベンチャーにとって事業モデルが市場で成功した結果で生まれる選択肢の一つであり、投資側にとっては投資出口の一つの選択肢に過ぎません。投資先ベンチャーが事業に成功さえすれば、株式売却の投資出口は幾らでもあります。事業に成功すれば、ですが。
A43 商品化に時間がかかり、その資金が必要ですが、出資してくれますか
基本的には出資でなく経営支援をします。
ベンチャーキャピタルの出資は将来の何倍ものリターンを期待してのものであり、商品化の段階に出資するか、事業化成功の見通しが出てから出資するか、業種により事業成功の類型パターンが異なるので、出資に関しても業種により異なります。例えば創薬事業への出資は明らかに前者で、医薬業界の専門家が判定して、商品化の段階から出資が実行されます。工業品では商品化が完了して市場性が評価できる段階になってから、出資が可能になるでしょう。
様々な国や地方自治体の補助金が商品化の段階から用意されています。また、事業会社との提携も商品化の段階から可能でしょう。ベンチャーキャピタルからの出資を期待する前に、補助金や事業会社との提携を検討しましょう。それでも出資を求めるのであれば、遠慮なくベンチャーキャピタルに相談されては如何でしょうか。弊社でもこの段階での相談に対応します。
A44 資本政策作成や株価算定が判りません
弊社ファンドの投資対象となるベンチャーや技術シーズの企業化プロジェクトであれば、具体的な作成をお手伝いします。毎月第一、第三、第五月曜日の午後3時から1回1社で、ベンチャー経営者に資本政策作成や株価算定を手伝う会合を開催していますので、お申込み下さい。弊社はベンチャーキャピタルですので、資料を使用する前に公認会計士や税理士など専門家に作成資料を確認することが、お手伝いの前提条件です。事前申し込みの無い当日参加はお断りをしています。
A45 経営者が個人保証する借入(Debt)を避けて、株式発行(Equity)だけで資金調達をしたい
数は少ないですが、弊社ファンドの投資先にもそのような経営方針でベンチャーキャピタルより出資を受けて事業を進めている経営者がおります。今までの結果は決して成功しているとは言い難いようです。基本的には外部資金を調達して事業する上で、この考え方「事業はゲームであり、経営者として事業成功可否による資金面のリスクは負わない」は無理があるでしょう。またベンチャーキャピタルも出資段階で経営者のこの方針が判っていたら、出資をしない理由の一つに挙げるでしょう。
借入に際して企業経営者の個人保証をとることは、社会的な要請からも法制面からも避ける方向に向かっていますが、借入に際して個人保証の要請を断れる経営者は居ないでしょう。従って、事業失敗の万が一の場合には個人生活面に深刻な影響を及ぼす借入の個人保証を、極力避けたいというベンチャー経営者の気持ちは良く判ります。
ベンチャーキャピタルとしての悩みの一つに、経営者が借入に際して最初から厳しいペナルティを覚悟するのに、出資に関してはそれが無いということがあります。ベンチャーキャピタルの気持ちとしては、出資についても事業が失敗したら必ず出資金を返すという社会的なルールが欲しいところです。少なくとも出資金についても必ず返すという暗黙の社会的な了解があれば、事業が行き詰まる前にもっと経営者が必死に事業挽回の努力をするのでは、という印象を持っています。
結論として、借入と出資のバランスをとって資金調達を行う、ということでしょう。財務に「株主にとって借入は出資のリターン効率を向上させる」というMMポジション理論があり、個人保証の問題を離れても、適正規模の借入は株主の利益に結びつくので行うべき、とご理解下さい。
A46 特許は発明者である経営者個人所有のままで、会社には専用実施権を与えたい。
一時的には許されますが、株式上場の支障になり得る事項で、最終的には特許は会社所有とする原則です。経営者が所有する特許の専用実施権を会社が持つ例が、実際には株式上場を果たした企業で増えているようです。
許されない理由は利益相反の恐れが大きいからです。事業収益の基本的な構成要素である特許があるとして、その特許の発明者が会社経営と無関係であれば、会社側の専用実施権取得で構いません。特許がベンチャー経営者の個人的に所有するものであり、経営者がロイヤリティ収入など特許使用の利点を享受し、経営者として使用ロイヤリティ料率などの対価を決定でき、結果として会社の収益を左右することは、利益相反として許されません。
弊社のファンドが事業成長の初期の段階で認めている例では、補助金制度の利用条件に「(趣旨の目的を達しない)場合は特許を補助金支給側の所有とすることがある」という条項があり、補助金の利用が終了してから、速やかに特許を会社帰属にする、という前提があります。個人所有特許を会社帰属に変更するには税制の問題が発生しますので、予めご留意下さい。
A47 起業したら給与がゼロでは生活できません。適切な給与をとりたいのですが。
起業家が事業成功に辿り着くまでの厳しい環境について、否定する人は居ないでしょう。事業成功のために自ら用意した自己資金に加えて、外部から資金を調達する場合は、出資者に対する責任を含めて、より厳しいものになります。将来に予測される、もしくは予測できない資金需要に備えて、手元資金の費消計画と将来の資金調達計画を検討していくと、経営者としての自分の給与を決めることは本当に難しい判断となります。
生活のための資金は当然に必要ですが、事業資金から幾ら回すかは、すべからく経営者ご自身の判断(哲学?)になります。事業資金からは給与を一切とらない判断をされている起業家が、産学連携ファンドの出資先に複数あります。起業した事業の他に大学からの給与が出ていたり、早期退職で長期間の生活資金を確保できているケースなど、いずれも起業時に生活資金を予定出来た方々です。
しかし大部分の出資先は出資者から集めた事業資金から給与をとっています。給与の額について相談される場合、産学連携ファンドでは「成功したら得られる報酬は、成功してからとりなさい」と、「成功するまではミニマムの給与にしなさい」と、申し上げています。起業する前に得ていた給与より多くとることは、経営者としての責任が増えたから良いと主張されても、自己資金で事業を継続されているのであれば結構ですか、他人の資金を使っている以上は「もう一度検討して下さい」と申し上げます。
起業家にとって適切な給与とは、家族を含めて生活が維持できる最低水準以上であること、将来の見えない資金需要を計画する過程で決めること、成功報酬分は成功してからもらう、ことでしょう。
A48 役員派遣などベンチャーキャピタルの経営関与は害が大きいと思います
理由は何でしょうか。ベンチャーキャピタルが経営に関与するだけの力もメリット期待も無い、のであればその通りです。
繰り返しになりますが、優れた技術シーズが事業成功に結実するためには、商品化の成功を始め、有効な市場アクセス、競合対策、組織構築など、多くの事業要素の獲得が必須です。役員派遣などのベンチャーキャピタルの経営関与は、ベンチャーが欠いている事業要素を補完する、経営努力を支援するものです。投資契約にて要求される条項なので、事前に十分にベンチャーキャピタルと議論を行い、害が無いように相互理解を築くことが出来ます。
A49 経営権を確保するために、持ち株比率は50%以上を上場まで保持したい
経営者が持ち株比率50%以上を持つことは、経営上で他人に左右されない強い決定権を持つことを保証します。他の株主が34%の重要事項の拒否権を持ったとしても、経営者にはいくらでも対処の仕方があります。漠然とそのような希望を持つことは当然でしょう。
外部資金を出資により調達するベンチャーは、業種により必要資金額が変化するので一概には言えませんが、大きな資金を必要としないITベンチャーであれば十分に可能でしょうし、必要資金額が大きい開発製造型のベンチャーは方針を貫くのが難しいでしょう。
持ち株比率が50%を割ったら、即ち絶対的な経営権でなくなったら、何が経営者にとって問題になるのでしょうか。経営者が事実面で事業推進者であるか、雇われ経営者であるかで問題が異なります。
ベンチャー経営者の場合はほとんどが事業推進者でしょうから、外部から評価するベンチャーの会社価値として、その経営者を欠いたら事業がうまく進まず、価値が大幅に落ちるでしょう。従って、経営者は持ち株比率によらず、既に強い経営上の地位を占めているのであり、持ち株比率が50%を割ることによって経営支配権が揺らぐことは、少ないでしょう。しかも事業成功に必要な資金調達により徐々に持ち株比率が下がっていくのであれば、増資の都度に経営権が出資者から認められており、問題とはならないでしょう。株主にしてみれば、辞められたら、経営を放棄されたら、困るのです。最後まで責任を持って事業成功に辿り着いて欲しいのです。
雇われ経営者は本来的に、持ち株比率の問題を克服した株主間のバランスの上で任にあるので、このような要求は出てこないでしょう。
従って事業を推進する経営者にとって、持ち株比率を50%以上に保つことは、経営権の維持(裏返せば経営責任を持つ)に絶対に必要であるとは言えません。
A50 投資契約で経営者が株式買戻し義務を負うことに、異論があります
ベンチャーキャピタルから出資を仰ぐと、必ず投資契約を締結して、ベンチャーキャピタルからは出資の目的達成のための様々な条件が、ベンチャー側からは資金調達の条件が、何らかの内容で定められます。ベンチャーキャピタルとしてはあらゆるケースに予め契約上で対処しておきたい訳で、何らかの理由で投資の継続が難しくなったら、損をしない価格で、経営者に出資分を引き取ってもらいたい訳です。そのためにベンチャーキャピタルは株式買戻し条項を盛り込むことを要求します。会社側にも買戻し義務を契約上で負わせる内容が通常ですが、法人間の予めの買戻し義務を伴う出資は法的に疑問があり、経営者個人に予め買戻し義務を課そうとする訳です。
ベンチャー経営者は本条項を拒否することが出来ますが、そのために出資を受けられなくこともあり得ます。経営者個人が買取りを迫られるケースに陥った場合は、例外を除いて経営者個人には負担能力が限られているでしょうし、会社にも買取り資金が欠けているでしょう。契約上で買取価格を定めていても、実際には簿価純資産方式の非常に低い価格に落ち着くことが圧倒的に多いようです。ベンチャーキャピタルは最終的に投資した株式をファンド期間内に全て処分する義務があり、例え契約外の低い株価でも、引き取ってもらうことで満足せざるを得ないからです。
従って、経営者が株式買戻し条項に納得できなくても、実害はほとんど無いと天秤にかけて、出資を実行してもらうことの方が得策ではないでしょうか。
A51 将来の事業成功を見込んで、なるべく高い時価総額で増資をしたいのですが
事業が計画通りに順調に成長しない限り、高い時価総額(株価X株式数)での増資は次の増資の大きな障害になります。企業成長が計画通りに推移するという前提を置いて、無理な増資を実行するのは危険です。なるべく株価を高く、という経営者の気持ちは理解できますが、自分の首を絞めることにならないように、ほどほどの時価総額の設定で満足しましょう。
一般的に出資から投資出口まで最速でも5年以上かかるので、ベンチャーキャピタルは縦軸に売上高、横軸に時価総額を置いた対数表示の2次元のグラフに、個別の投資先の推移を毎年プロットして、右上がりに推移しているか、見ています。横軸の時価総額が増える(横軸で右に移動)ことは増資を実行したことを意味し、それに伴い若しくは先だって売上高が増大している(縦軸で上に移動)かを見て、事業計画通りに事業が成長しているか(右上がり)を評価する訳です。
即ち、右上がりであれば正常で、右下がりは異常信号となります。右下がりは増資はするものの売上がさっぱり伸びないことを意味し、事業計画から大きく逸脱していることを示します。ベンチャーキャピタルは右肩下がりの投資先の株式については、売却処分をするなどの努力を始めます。最初は経営者に対する買戻し要求となるでしょう。
異常に高い時価総額での増資はどのようなプロットになるのでしょう。そのような増資を行った投資先は、ひと固まりの一般的な増資を行っている投資先グループから、ポツンと離れてプロットされます。ひと固まりから右に離れたプロットとなります。先ずはそのような増資要請にはベンチャーキャピタルは応じないでしょう。無理な事業計画であることが見え見えですから。
経営者として毎年の事業成長推移を上記のような二次元対数グラフで管理していくことを勧めます。
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